建設業許可の決算変更届とは?
税理士さんが税務署に提出する決算書(税務申告用)とは異なり、建設業法に基づいた会計処理を行い、同法に基づいた書式にて建設業用の決算書に変更して作成し提出するため、税理士さんの作成した決算書を書き写すだけでは実はダメなのです。
年1回の提出を怠っていると、更新や業追など各種手続きが出来なくなります。
入札参加を考えている会社だと、処理方法によっては経営事項審査の結果に大きな影響を与えることにもなります。
決算変更届とは?
決算変更届(事業年度終了届、決算報告などの呼び方もします)は、建設業許可業者が許可行政庁に提出する「変更届」の一種です。建設業許可を新規で取得した際に、みなさんは、県土整備事務所(福岡だとこの名称です。旧土木事務所ですね)といった役所に、様々な書類を提出して、やっとの思いで、建設業許可を取得した事と思います。
そのやっとの思いで取得した建設業許可は、取得したらそれで終わりではありません。建設業許可を取得した後は、取得した許可を維持するために様々な届出が必要になります。
例えば、
1,取締役に変更があった場合には、取締役の変更届
2,本店所在地に変更があった倍には、本店所在地の変更届
3,資本金に変更があった場合には、資本金の変更届
4,経営業務管理者や専任技術者に変更があった場合には、その旨の変更届
といったように、会社の重要事項に変更があった場合には、変更届を提出するように、法律上求められています。
決算変更届は、上記の変更届のひとつであるとお考え下さい。
建設業許可を取得した建設業者は、取締役の変更や本店所在地の変更といった会社の重要事項に変更があった場合と同じように、決算を迎えたら、決算変更届の提出もしなければならないのです。
どこに、何を、いつまでに
では、具体的には、「どこに」「何を」「いつまでに」提出すればよいのでしょうか?
どこに
建設業許可業者は、決算変更届を本店の所在地を管轄する県土整備事務所に提出しなければなりません。
税務署ではありませんし、同じ書類・手続きでもありません。
何を
別紙8:変更届出書 | これは表紙です。 |
二号:工事経歴書 | 許可業種すべてについて、事業年度内の工事(経審受けないなら上位10件程度)の、「注文者」「工事名」「現場場所」「請負代金額」「工期」をそれぞれ記入します。 |
三号:直前3年の各事業年度における工事施工金 | 許可業種全てについての直前3年間の各事業年度における完成工事高を、「元請(公共)」「元請(民間)」「下請」に分けて記載します。 |
<財務諸表>様式第15号:貸借対照表 様式第16号:損益計算書 様式第17号:株主資本等変動計算書 様式第17号の二:注記表 | いずれも、税理士作成の決算報告書の中にある財務諸表を「建設業用」に作り直す必要があります。 |
事業報告書 | 株式会社のみ。 任意の様式で可。 |
納税証明書 | 知事許可の場合は、法人事業税納税証明書。 (大臣許可の場合は、法人税納税証明書。) |
上記のような書類が必要です。
〇「工事経歴書の合計額」と「直前3年の各事業年度における工事施工金額」が一致しない
〇「直前3年の各事業年度における工事施工金額の合計」と「損益計算書の完成工事高」が一致しない
〇「損益計算書の完成工事原価」と「完成工事原価報告書の合計額」が一致しない
〇「損益計算書の当期純利益」と「株主資本等変動計算書の当期純利益」が一致しない
〇納税証明書や事業報告書を添付し忘れる
このへんのミスに注意です。
むしろそこをチェックしてるイメージありますしね。
いつまでに
決算変更届の提出期限は、「事業年度終了後4カ月以内」と法律上、定められています。3月末決算の会社の場合7月末までに、8月末決算の会社の場合12月末までに、決算変更届を提出する必要があります。
決算変更届を提出しないとまずいの?
建設業法第11条2項には、「書類を、毎事業年度経過後4カ月以内に、国土交通大臣または都道府県知事に提出しなければならない。」と規定されていますが、決算変更届を提出しないからと言って、罰則や処分があるわけではありません。
努力義務です。
しかし罰則や処分が無いからといって、決算変更届を提出しなくて良いわけではありません。「何も言ってこない、このまま出さなくてもいいかも……」と思ってはいけません。決算変更届は、出しても出さなくても良い書類ではなく、必ず提出しなければならない書類です。
以下では、決算変更届を提出していないことによる不利益をご紹介します。
更新申請が出来ない
まず一番大事なのは、決算変更届を提出していないと、5年に1度の建設業許可の更新をすることができません。建設業許可を更新する際には、決算変更届の提出に漏れがないか、必ず、チェックされます。
1期分でも漏れがあると、建設業許可を更新することができません。
業種追加や般特新規申請が出来ない
更新申請は5年に1回だから、更新前にまとめて5期分を提出すればよいとお考えになるかもしれませんが、決算変更届を提出していないと、業種追加や般特新規申請もできません。
業種追加:現在持っている許可業種に新たに許可業種を増やすこと。
般特新規申請:現在持っている一般建設業許可を特定建設業許可(またはその逆)に変更すること。
業種追加申請も般特新規申請も、場合によっては、急いで申請しなければならないケースもあると思いますが、その際に、決算変更届の提出が1期分でも漏れていると申請を受け付けてくれません。
結局楽なのは
決算変更届が「出しても、出さなくてもどちらでも構わない」書類であれば、「出さない方」が楽ですよ。
しかし、決算変更届は、「出しても、出さなくても良い書類」ではなく、「いつかは必ず提出しなくてはならない書類」です。
更新申請の際に、過去5年分の決算変更届が必要になったり、業種追加申請や般特新規申請の際に、過去分に遡って、若しくは、複数年度にまたがって、決算変更届の提出が必ず、必要になります。
提出漏れがある過去分を、複数年まとめて提出するということは、「何を」で記載した書類を複数年分、準備しなければならないことを意味します。消して楽ではありません。
5年前に何やってか事細かく覚えてますか?
5年前の書類をすぐ出せますか?
5年前のとあるひとつの探したい情報をすぐ探せますか?
いざそうなると、とても大変です。
そのような思いをするくらいなら、きちんと毎年、毎年、法律で定められた期間内に、提出しておいた方が、労力や負担が少なくて済むと考えます。